どうして依存症になった?

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「どうしてそんなんになっちゃったの!」と詰問される。正直に言うと「分からない」ということになる。いや、正確には全く分からないというわけでもない。

依存症に陥るプロセスは、依存対象への曝露のみが注目されがちだが(アルコール依存症なら毎日飲み続けるなど)、実際には他にも多くの要因が関わっている。

例えば、幼少期のストレス体験をもつ人は依存症に陥る可能性が高いという2004年の調査(The Origins of Addiction: Evidence from the Adverse Childhood Experiences Study)がある。
あるいは、遺伝的な要因も存在する(アメリカ国立衛生研究所:Genes and Addictions)ことが知られている。
もちろん、その人が現在置かれている環境も、要因の一つだろう。大きなストレスを受け続けていると、メンタル面に問題を抱える可能性が高い。

このように、様々な要因があるため、これが原因だと話すことが非常に困難なのだ。さらに言うなら、本人すらも覚えていない、気づいていないことが要因として存在する可能性もある。

依存症のクリニックで初診を受けた際、現在の症状や近況はもちろんのこと、幼少期の環境だとかこれまでの経緯だとか、とにかく事細かに色々なことを尋ねられた。それが役に立っているのかは分からないが、そういった話をすることで、今まで考えていなかった気づきが意外とあったのも確かだった。

そんな感じで、詰問されたことをきっかけに上記のようなことを含めて色々と考えてみた中で、一つふと思ったことがある。それは、体の病気と同じなんだなということだ。遺伝だとか、生活環境だとか、そういった要素でできる個々の病気に対する耐性のようなものがあって、ふとしたきっかけで弱いところに症状が現れる。風邪だとか、下痢だとか。

タンクトップ1枚で寒空の下平気な人もいれば、すぐ風邪をひく人もいる。ガンジス川の水を飲んでも平気な人もいれば、ちょっと冷たい水を飲んだだけで下痢を起こす人もいる。

依存症や、あるいは鬱といった他のメンタルな症状も、そういったものなのかもしれない。

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